「音楽を記録し、そして再生する。」言葉にしてしまえばとてもシンプルな行為でありながら、それを成し遂げるために、本物の音を理解し、そして本物のノウハウを知る者は、世界広しと言えどもそう多くはいません。
ティム・デ・パラヴィチーニは、その半世紀近くに渡って、まさにアーティスト達が描き出した作品/ 音楽を記録し、そしてそれを再生するという音楽現場の最前線で活動してきました。Studer C37 等のマスターテープマシンのアップグレードモディファイをはじめ、レコードカッティングマシンの製作(現在はMobile Fidelity の使用が有名)、またレコーディングに関連するプロフェッショナルユースのアナログ機材(マイクロフォンアンプ、チューブ式マイクロフォン、リミッター/ コンプレッサー、イコライザー等)の製造、そして民生機としてパラヴィチーニ自らが主催するEAR ブランドの各種アンプやソースのデザイン、製作、また他社ブランドへのコンサルタント/ アドバイザー等々、その活躍の場は多岐に渡ります。
こうした音楽を記録する装置から再生する装置に至るまでの様々なハードウェアのデザイン、製作を自ら1人でこなしてしまう能力は、現代においてとても貴重な存在と言えるでしょう。
ピンクフロイドやTOTO、ケイト・ブッシュ等の辣腕エンジニアとして定評のある「ジェームス・ガスリー」をはじめ、非常にシビアで難易度の高い音を求める多くのスタジオエンジニアやプロミュージシャン達(ピンクフロイド/ デイヴィッド・ギルモアのAstoria Studio の機材の多くはパラヴィチーニが製作)から、絶大な信頼を集めているのも、真に「いい音」を知り、入力から出力に到るまでその「いい音」を導き出し、維持/ 保存/ 再生する能力に長けたパラヴィチーニの感性が唯一無二であることを、彼らが知っているからに他ありません。
そして、これらパラヴィチーニが手がけるほとんどの装置類は、真空管やトランスを多用したアナログ機器であり、逆に言えばパラヴィチーニが非常に音にうるさいプロフェショナル達を納得させるためには、現代においても必然的にアナログ機器を介在しないと理想の音に近づけないという事実を如実に物語るものでもあります。
しかし、時代はCD の登場と共に音楽製作の現場においても、急速にデジタル化が浸透し、PC を含むソフトウェアの充実と歩調を合わせるように、安価でそれなりの音が出れば良しという風潮がプロの間においても多勢を占めるようになって来ています。
もはや楽器が弾けなくても本物のようにシュミレートされたソフトのパラメーターを少し
いじれば、それなりに本格的な楽曲が誰にでも出来てしまう時代です。
本当にいい音を聴き分ける耳を持ち、そしてそれに拘り、それを求める本物のエンジニア
やミュージシャンが減ってしまったと、パラヴィチーニは言います。
しかしそれはデジタル化が原因ではなく、あくまでもデジタル機器との接し方であり姿勢
であるとパラヴィチーニは説きます。
正真正銘のアナログマンであるパラヴィチーニ自身も決してデジタルに対するアンチテー
ゼでは無く、新たなる挑戦としてデジタルとアナログを融合させた製品のアイデアを温め
て来ました。そして登場したのが「Acute 3」CD プレーヤーです。
Acute 3 CD プレイヤーは、ティム・デ・パラヴィチーニ/ EAR 初のデジタルオーディオ製品です。しかしデジタルとは思えないほどアナログ感覚に溢れた、パラヴィチーニ独自の
感性と経験に基づいたアナログ/ デジタルハイブリッドとでも言うべきCD プレーヤーで
す。
最も特徴的な回路構成の1つとして目を引くのが、デジタル信号は全てパラヴィチーニが
デザインしたアナログフィルターを経由して、他のEAR のプロ用オーディオ機器と同様
にトランスフォーマーをカップリングしたチューブ式(PCC88 x 2)ライン出力段へ送ら
れ出力されます。この段階でデジタルサウンドは、あたかもアナログレコードのグルーブ
から発せられたような音質に変換されます。チューブの特性にマッチするように仕立てら
れた出力トランスは、パラヴィチーニ自身が手巻きで納得する音が得られるまで、幾度と
無く試行錯誤を繰り返した後に完成させたオリジナルスペシャルメイドです。
出力はそれぞれデジタルアウトプット(Toslink Optical S/PDIF) とアナログアウトプット(フローティングバランスXLR、及び同等クオリティーのアンバランスRCA)を備え、アナログアウトにはバランス/ アンバランスともに最大5Vrms の出力を持たせました。
これによりプリアンプを介さずとも、ダイレクトにパワーアンプに接続して駆動する事が
可能となり、フロントパネルのアナログ式ヴォリュームで出力をコントロール出来ます。
Acute 3 CD プレイヤーはまた、Wolfson 社製の24bit/96KHz サンプリングDAC、及び
Cirrus 社製S/PDIF レシーバーを搭載し、3系統のデジタル入力(USB、Coaxial S/PDIF、Toslink Optical S/PDIF)により、PC 等のデジタルセットからのソースで音楽を楽しむことも可能です。いずれのデジタルオーディオ入力も、パラヴィチーニが理想とする、まるでアナログレコードのようなサウンドを奏でるように全てがデザインされています。
手段がどうであれ、パラヴィチーニが目指すものは「アーティスト達が創造する素晴らしい音楽を、そのままリスナーへ届けたい。」という信念です。
ゆえにデジタル/ アナログという領域に関係なく、現在のパラヴィチーニの理想に最も近
い音を奏でるCD プレーヤー/DAC が、この「Acute 3」です。
パラヴィチーニの新たなる挑戦を是非お楽しみ頂き、デジタルとアナログのナチュラルな
コラボレーションをご堪能下さい。
Specifications:
●D/A コンバーター: 24ビットマルチレベル デルタ シグマコンバージョン
●レーザーピックアップ: 3ビーム/780nm
●デジタル入力: USB、75Ω Coaxial S/PDIF、Toslink Optical S/PDIF
●デジタル出力: Toslink Optical S/PDIF
●アナログ出力: Phono:5V rmsシングルエンド、
バランスXLR;5V rms XLR 2ホット
●使用真空管: 2xPCC88 / 6DJ8
●出力インピーダンス: <60Ω(バランス、又はシングルエンド)
●推奨負荷: >600Ω(バランス、又はシングルエンド)
●歪率: <1%
●周波数特性: 20Hz - 20KHz
●サイズ: W435 x D320 x H95 mm
●重量: 8kg
●リモコン付き
※生産、及び販売を終了致しました。